ガイドスキルマップの対象と策定手法

対象とする「ガイド」の定義

ガイドとは「旅行者を希望する言語で案内し、その地域の遺産や施設などの観光資源について説明を行う者」(世界観光ガイド協会連盟:World Federation of Tourist Guide Associations, 2003)と定義し、ガイドスキルマップの対象もこの定義に沿う。通訳の有無や、案内の対象(個人・団体)は問わない。

ただし、医療ガイドや山岳ガイドのように特殊な素養が求められる場合、ガイドスキルマップのなかに共通する素養も数多く存在するものの、ガイドスキルマップでは対応できない素養も存在する。

また、一般的に「ガイド」と呼ばれる者だけでなく、宿泊施設や交通機関、商業施設など、旅行者を接遇する職務に就く者も、ガイドに求められる素養の一部が求められ、ガイドに求められる行動特性と共通している事項が多く見られる。そのため、「ガイドスキルマップ」の一部は、それぞれの施設に従事している者にとっても参考にすることが可能であると考えられる。

策定手法

  • コンピテンシーモデルの活用
  • ガイドスキルマップの策定にあたっては「コンピテンシーモデル」の手法を用いた。「コンピテンシー」という表現には複数の定義が存在するものの、共通していることは、優れた成果を持続的に出している人に共通する行動特性を指すという点である。「コンピテンシーモデル」とは、職種などの単位で定義された「コンピテンシー」を基準とし、採用、能力開発、評価などの人的資源管理を行うために整理されたフレームワークである。一部の企業では、人材アセスメントや能力評価の分野で活用されており、国際的にも一般的な手法として認められている。

    谷内(2001)氏*1の論文によれば、コンピテンシーを設定するための手順には以下の4つが必要とされており、ガイドスキルマップの策定においても同様の手順を踏んでいる。
     ステップ1:各職務における高業績を定義する
     ステップ2:高業績者を特定(選定)する
     ステップ3:高業績者が持続的に高い成果を生み出す行動特性を抽出する
     ステップ4:抽出した行動特性の中から重要なものを選び、コンピテンシーとする

  • 領域・スキルセットの抽出
  • 現在活動しているガイドや、関連する企業・団体などへのインタビュー、国内外のガイド制度の調査を通じて、優れたガイドに共通して見られる行動特性を分析し、ガイドに求められる素養を5つの「領域」、計25個の「スキルセット」に整理した。
    また、それぞれのスキルセットについては、客観的に評価できるよう「行動基準」を定めた。

    参考
    1. 谷内 篤博(2001) 「新しい能力主義としてのコンピテンシーモデルの妥当性と信頼性」, 経営論集 第11巻第1号 2001年 pp.49-62

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