調査結果

A 各国のガイド資格・認定制度の概要

各国のガイド制度の扱いについて、「①資格制度はどのように統括・運営されるか」「②業務独占の有無」の2点で整理すると、下記の通りとなる。なお、母国語ガイドの資格制度が存在しない国には*マークを付した。



中国・台湾・スペイン・アメリカのニューヨーク市といった、資格保持者の業務独占が認められる場合、国・自治体によって制度が統括・運営される傾向にあることが分かった。なかでもスペイン・アメリカは、国ではなく各州がそれぞれ制度の統括・運営を行っている点に特徴がある。スペインは複数の州で共通した要項が見られるが、アメリカは州ごとに制度が全く異なる体系となっており、各州の実態を反映したガイド制度になっていると言える。日本の地域通訳案内士も各地方で異なる研修や試験が実施されているが、制度そのものの統括は国が行っているという点に特徴がある。

業務独占が一部もしくは全て撤廃されている国では大学・団体等が資格付与・認定を行う傾向にあることが分かった。具体的にはイギリス・フランス・アメリカ(ハワイ・シカゴ)、日本の全国通訳案内士が挙げられる(日本の全国通訳案内士は独立行政法人である
JNTOが運営しているため、国が運営しているという考え方もある)。特にフランスでは全国各地で大学が認定プログラムを運営しており、受験者に多様な取得経路を与えていた。

また、一部業務独占を認める国では多様なガイドの活動を認めながらも、資格保持者のみが案内できる施設が存在した。一部業務独占を認めるイギリス・フランスは、歴史的遺産をはじめとした一部重要施設では資格保持者のみ案内できるとし、遺産保護と遺産の価値訴求を同時に実現している。

B 各国の資格取得・認定プロセス

各国の資格取得・認定方法は、「試験」「研修」「指定資格の取得」のいずれかに分類される。一部の国では2つの方法を併用していることもある。以下の表では、詳細を含めて資格取得・認定プロセスの類型を整理した。



今回調査した計8つの国・地域では試験を実施する国・地域が最も多い。試験の内容としては、筆記試験だけでなく、口述試験や実技試験を採用している国が多い。特にイギリスでは試験中、ツアーの計画や実際の案内を長時間行わせるなど、実技を重視していると考えられる。

研修受講によって資格付与・認定を行うのが台湾と日本の地域通訳案内士である。なお、台湾は試験との併用となっており、日本の地域通訳案内士も一部の地域では研修受講後に修了試験を行っている。研修は試験と比べ、より多様な知識・スキルを教授できるという特徴があり、台湾・日本でも一定の時間をかけて知識・実務双方の内容を扱っている。

所定の資格や学位の取得によって資格付与・認定するのがスペイン・フランス・タイである。大学・団体等が当該資格・認定の取得プログラムを運営しているケースが多く、取得経路が多様になっている。研修と同様、プログラム内で時間をかけて知識・実務双方を扱う傾向にある。

また、資格更新制度については設けられていない国も多く、更新時も事務手続きのみでよいとする傾向にある。日本の全国通訳案内士は5年ごとの研修受講による更新が義務付けられている点で特徴的である。

C 各国の対応言語

資格・認定制度における対応言語に関して、各国を訪れる旅行者に合わせ幅広い言語に対応しており、多くの国では母国語・通訳どちらも資格制度を設けていた。しかし、日本・フランスの2か国は母国語ガイドについて資格制度を設けていなかった。なお、タイは2019年までタイ語・外国語で異なる資格とされていたが、制度が改正され言語の区別が無くなった。

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