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はじめに

調査の背景

日本では近年、特に外国人旅行者からのガイド需要が高まっている。外国人旅行者のニーズは団体から個人へ、購買から体験へと変化しており、様々な要求に柔軟に対応できるガイドが求められている。加えて日本は言語障壁が高いため、旅行者に帯同して現地を案内する存在としてガイドは必要とされている。

また日本人旅行者向けガイドも全国で活動しており、体験を求める割合も増加していることから、ガイドへの需要はますます高まっていくと考えられる。

加えて、ガイドの層も拡大しつつある。日本語でのガイドについては従来より規制は存在しなかったが、さらに2018年より通訳ガイドの法規制が緩和され、誰もが有償での通訳ガイド業務に従事できることとなった。これにより日本では、どのような言語でも誰もがガイド業務を行うことができるようになった。

課題

通訳ガイドに関する規制の緩和によって、日本では誰もがガイドとして活動できるようになり、ガイド市場は大きな変化のタイミングにある。今後日本全体のガイドの質向上の方向性を検討する必要がある。

調査の意義

今後の日本におけるガイド質向上の方向性を検討するために、各国のガイド制度調査を実施した。

なお、2009年に日本の観光庁が同様の調査を実施しているものの、対象が通訳ガイドに限られているほか、対象国もイギリス・フランス・ドイツ・イタリア・アメリカ(シカゴ)の5か国のみであり、また調査から10年以上が経過しているため、イギリス・フランスなど現在の制度と異なる記載が見られる。

各国のガイド制度詳細

日本

概観

日本には、公的に認められているガイド制度として、「全国通訳案内士」と「地域通訳案内士」の2種類が存在する。いずれも外国語を用いた案内を前提とした資格であり、日本語のみを用いるガイドには類似した資格・認定制度は存在しない。また「全国通訳案内士」「地域通訳案内士(当時は「地域限定通訳案内士」『地域特例通訳案内士』の2種類)」のいずれも従来は業務独占資格として認められていたが、2018年1月に施行された「通訳案内士法及び旅行業法の一部を改正する法律」によって名称独占資格へと変更された。

上記の規制撤廃に伴い、近年は、資格を所持していない訪日外国人旅行者向けガイドの活動も活発化している。こうしたガイドは、ガイドボランティア団体や旅行会社などに登録しているケースが多く見られる。また博物館や美術館内の案内を行う施設内専門ガイドも存在し、施設利用の無償サービスとして提供しているケースが多い。

ガイド資格・認定制度

全国通訳案内士
  • 制度概要

    全国通訳案内士は、訪日外国人旅行者向けに通訳案内の業務を行うものを対象とした制度である。同制度は、「通訳案内士法」によって規定されている。

    「通訳案内士法」の前身は、1949年に制定された「通訳案内業法」であり、2006年に現在の名称に改正された。「通訳案内士法」の第一条には本法律の目的として「通訳案内業の健全な発達を図り、外客接遇の向上に資することを目的とする。」と記載されている。

    前述の通り、2018年には大きく内容が改正され、従来の業務独占規制が撤廃されたほか、試験科目の見直しや定期研修受講の義務付けなどが新たな項目として加えられた(詳細は後述の「iii.支援・更新制度」を参照)。なお、全国の一部の観光施設では、本資格証を提示することで入場料割引等の特典を受けることが可能である。2019年時点で、全国通訳案内士の登録人数は25,239人である。

  • 資格取得・認定プロセス

    全国通訳案内士は、必要な知識及び能力を有するかどうかを判定することを目的に実施される「全国通訳案内士試験」に合格することで取得できる。日本政府観光局(JNTO)が、国の試験事務代行機関として運営している。

    【試験概要】
    開催頻度・期間 年1回(計2日間)※例年8月中旬頃
    受験資格 なし
    受験料 1言語あたり11,700円
    試験免除 一部科目については、一定の条件(過去の同試験で合格基準点以上の点数を取得済、特定の資格・認定制度を取得済など)を満たすと、該当科目のみ試験の実施が免除される。
    実施実績 2019年度受験者数:7,244人
    2019年度最終合格者数:618人
    (合格率8.5%)
    【試験内容】

    試験は全国の指定会場における「筆記試験(第1次試験)」と「口述試験(第2次試験)」で構成される。

    1. 筆記試験(第1次試験)

      「外国語」「日本地理」「日本歴史」「産業・経済・政治及び文化に関する一般常識」「通訳案内の実務」の計5科目で構成される。

      ▼ 筆記科目(第1次試験)の構成
      試験科目 時間(分) 配点(点)
      外国語 120 100
      日本地理 40 100
      日本歴史 40 100
      一般常識 20 50
      通訳案内の実務 20 05
      • 外国語
      • 業務を適切に行うために必要な読解力、日本文化等についての説明力、語彙力等の総合的な外国語の能力が問われる。受験者は英語、中国語、韓国語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、イタリア語、ポルトガル語、ロシア語、タイ語の計10か国語から受験する言語を選択する。

      • 日本地理
      • 訪日外国人旅行者が多く訪れている、または外国人観光旅客の評価が高い観光資源に関連する日本地理についての主要な事柄(日本と世界との関わりを含む。)のうち、訪日外国人旅行者の関心の強いものについての基礎的な知識が問われる。

      • 日本歴史
      • 訪日外国人旅行者が多く訪れている、または外国人観光旅客の評価が高い観光資源に関連する日本歴史についての主要な事柄及び現在の日本人の生活、文化、価値観等につながるような日本歴史についての主要な事柄(日本と世界との関わりを含む)のうち、訪日外国人旅行者の関心の強いものについての基礎的な知識が問われる。

      • 産業・経済・政治及び文化に関する一般常識
      • 現代の日本の産業、経済、政治及び文化についての主要な事柄(日本と世界との関わりを含む。)のうち、訪日外国人旅行者の関心の強いものについての基礎的な知識(例えば、試験実施年度の前年度に発行された「観光白書」のうち、外国人観光旅客の誘客に効果的な主要施策及び旅行者の安全・安心確保に必要となる知識、並びに新聞(一般紙)の1 面等で大きく取り上げられた時事問題等)が問われる。

      • 通訳案内の実務
      • 通訳案内を行うに当たって必要となる関係法令に関する知識や旅程管理の実務に関する知識、訪日外国人旅行者の国別・文化別の特徴等に関する知識、災害発生時等における応急的な医療対応や危機管理に関する知識について、基礎的な内容が問われる。

    2. 口述試験(第2次試験)
    3. 訪日外国人旅行者が多く訪れている、また外国人観光旅客の評価が高い観光資源に関連する地理、歴史並びに産業、経済、政治及び文化についての主要な事柄のうち、訪日外国人旅行者の関心の強いものを題材として、受験者に通訳案内の業務を擬似的に行わせることにより実施される。試験は外国語で実施される。

  • 支援・更新制度

    2018年の通訳案内士法改正により、全国通訳案内士には、5年ごとに登録研修機関が行う定期的な研修「登録研修機関研修」を受講することが義務づけられた。研修では、旅程管理の実務や災害時の対応など、通訳案内士が案内の実務において求められる知識に関する講義が行われる。全国通訳案内士が本研修の受講を怠った場合は、都道府県の判断により、当該通訳案内士の登録を取消すことができる。

地域通訳案内士
  1. 制度概要

    地域通訳案内士は、特定の地域において、訪日外国人旅行者向けに通訳案内の業務を行うものを対象とした資格である。特に、該当する地域固有の歴史・地理・文化等の現地情報に精通した者とされている。同制度も「全国通訳案内士」と同様「通訳案内士法」によって規定されている。

     地域通訳案内士は、2018年の通訳案内士法の改正に伴い、従来定められていた、都道府県の試験によって資格を付与される「地域限定通訳案内士」、地方公共団体の研修によって資格を付与される「地域特例通訳案内士」が統合されたものである。

     なお同制度は、各自治体が自由に扱えるわけではなく、あらかじめ「地域通訳案内士育成等計画」を定めたうえで、観光庁長官の同意を取得する必要がある。2019年時点で全国37地域が導入を完了しており、2020年時点で、地域通訳案内士の登録数は2,631名である。

  2. 資格取得・認定プロセス

     地域通訳案内士は、自治体ごとの「地域通訳案内士育成等計画」に定められた研修を受講することで取得できる。

    【研修概要】
    研修期間 地域によって異なり、東京都は50時間程度、京都市は80時間程度
    受講資格 地域によって異なり、語学試験のスコアを提出する場合もある
    受講料 地域によって異なり、東京都は約2万円、京都市は約9万円
    【研修内容】

     地域によって異なるが、旅程管理、救急救命、現場実習、語学、観光に関する知識などがカリキュラムとして盛り込まれることが多い。また、地域によって対象言語は異なるが、多くは英語を採用している。また研修の最後に口述試験を実施しているケースもある。

  3. 支援・更新制度

    観光庁のガイドラインには「定期的な研修受講の義務づけがなされていないものの、全国通訳案内士と同様に、地域通訳案内士の認定後において、地方公共団体が自主的に定期研修を行うことにより、質の維持・向上を図っていくことが望ましい」と記載されており、定期的に更新を義務付ける自治体も存在する。(京都市は5年ごとに再登録手続きを求めている)